被写真の記憶

出演: 椿ヨーコ

椿ヨーコという名前で、カメラの前に被写体として立つことを始めて、まもなく丸3年になります。アートが好きで、鑑賞するという行為以外でアートに携わって生きていきたいといつも願っていました。表現手段を他に持たない私にとって「撮られる」という行為は、私の持つ身体を使って撮り手の持つイメージを体現することです。それはカメラを持つものにのみ見ることを許された、題目も舞台も台詞もない、かたちとまなざしだけのお芝居や舞踏のようなもの。作り手と作品の間に起こる対話にのみ椿ヨーコというモデルは存在し、息をすることができるのです。写真家と作品を作るとき、彼らからこちらに与えてもらえる手がかりはさまざまに異なりますが、それらを感じ取り解釈し身体的に表すことは、玉虫色の答えを持つ謎解きのようです。その謎に、自分なりの美意識と畏敬の念を持って私は向き合うのです。そういった矜持を持ってカメラの前に立つとき、私と撮り手の関係性は一対の表現者であり、共犯者であり、仮初めの恋人同士になります。共に作品を産み出す行為を通して美しいケミストリーが生まれることに、いつも新鮮な喜びを覚えます。今までの作品、そしてこれから生まれていく作品をこの場所で眺め振り返りつつ、今まであまり言葉にしてこなかった、そのとき―私が表現をするときのことを、皆様と共有できたらと思います。どうぞお付き合いくださいませ。

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